日本における乾癬の歴史

シェア:

乾癬の歴史は古く、古代ギリシャの文献ですでに登場しています。世界中でどの国でもみられる皮膚疾患であり、世界では人口の約3%にあたる約1億2,500万人が罹患していると言われています。特に欧米で患者さんが多く、一方でアフリカ・中東では少ないという地域差もあります。日本では人口の0.3%にあたる約43万人が罹患していると報告されており、そして増加傾向にあるとも言われています。

乾癬の歴史は古代ギリシャから

乾癬(Psoriasis)は歴史的にギリシャ時代から登場しているとはいえ、19世紀までは他の様々な疾患と混同されていました。乾癬がひとつの独立した疾患であることは1809年、英国人医師ロバート・ウィラン博士により発見されました。しかし、Psoriasisという名称となるまでにはそこからさらに40年近くの歳月を要しました。1840年にこの名前が決まって以降も原因究明には長い年月を要し、20世紀後半に入ってようやく自己免疫疾患であることが分かってきました。現在は科学の発展により、さらにその原因遺伝子をも突き止めようとする研究が進んでいます。

日本における乾癬の歴史

紀元前からの歴史を持つ乾癬ですが、日本の医療史にその歩みを明確に刻み始めたのは、日本乾癬学会(1990年設立)の前身である日本乾癬研究会が発足した1986年からと言えるでしょう。それ以来、「乾癬の病因の究明、治療方法の開発及び日本における乾癬患者の全国的疫学調査を行い、乾癬に関する教育並びに医療の向上に貢献すること」を目的に、毎年統計調査などを行い、年1回学術大会を開催することにより日本の乾癬研究の先鞭をつけてきました。乾癬というひとつの皮膚疾患に限定した学会というのは珍しく、またそれだけ乾癬が重要な皮膚疾患のひとつである証とも言えるでしょう。患者会とも積極的な連携を図り、患者さんたちと医師や医療関係者との直接・間接的交流を促す主軸としての役割を担うべく様々な活動を行っています。

そうした研究活動の中で見えてきたのが前述の「患者数の増加傾向」でした。戦前は、皮膚科受診者全体の0.25-0.35%が乾癬患者であったと見られており、戦後の食生活の欧米化が影響し、増加しているのではないかと推測されています。しかし、はっきりとした増加要因は現在も研究中です。医療の発達、啓蒙活動により受診数が増えることで、近年では、より正確な実態把握が可能になってきていますが、日本における乾癬に対する一般社会の認知度はまだまだ低く、今後の課題の一つといえます。

乾癬の歴史は、今後も患者さんとそのご家族や仲間の明るい未来を築く助けとなるよう着実に前進しています。

 

参考文献

  1. The History of Psoriasis, Ellen Seiden, National Psoriasis Foundation at https://www.psoriasis.org/Page.aspx?pid=1999
  2. National Psoriasis Foundation, https://www.psoriasis.org/cure_known_statistics
  3. 乾癬治療,2003 No.7 at http://www.teikoku.co.jp/japanese/contents/medical/kansen/kansen_pdf/07.pdf
  4. みんなで治そう乾癬BOOK, 乾癬ハンドブック編集委員会, 2009年,2004年初版 at http://jpa1029.com/archives/PSO_handbook2009.pdf
  5. 世界乾癬デー啓発ポスターhttp://jpa1029.com/archives/WPD/WPD.pdf
  6. NISSAY役立つ医療情報 メディカルリポートVol.7 皮膚の病気乾癬 No.1 ~根気よく、焦らず治療を~ https://www.nissay.co.jp/enjoy/medical/007.html -

シェア:

ページの
先頭へ戻る