医師であり乾癬患者であり。今、想うこと

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医師になり1人でも多くの患者さんのために

私に乾癬の症状が出始めたのは、小学校低学年の頃です。それから、40年以上、乾癬とつきあっています。乾癬という他の人には理解してもらえない病気に苦しんだ時期もありましたが、乾癬になったから医師を目指すようになったのは紛れもない事実であり、乾癬にならなければ、医師という人生は私にはなかったと思います。 進路を考える時期に、医療の道へ進むことは、自分の人生の使命のように感じ、迷いなく医学部を受験していました。しかし、夢だった医師免許を取得し、研修期間を終えて、いざ皮膚科を選択する時になると、自分の病気(乾癬)を治せていない私が患者さんに「大丈夫ですよ」と心から言ってあげられるのか不安でした。そのため、皮膚に症状がでる苦しみを理解しながら一緒に治療していくことならできると考えるようにしました。 ただ、長年、皮膚科医をやっていく中で、患者さんには様々な背景があり、今まで普通の生活をしていた人が、突然乾癬になった時のショックなど、分かっているようで他人が簡単に理解できるものではないことを実感しました。患者会に関わるようになり、色々な患者さんのお話を聞いて、「あっ、そうだったんだ」と気付かされることも多いです。多くの先生方も、患者さんと接して色々お話をしているうちに患者さんの気持ちを理解されるのでしょうから、決して乾癬患者である私が特別患者さんのことを理解している存在ではなく、お一人、お一人の患者さんの気持ちを丁寧に聞いていくことでしか、本当の患者さんのための治療はできないのだと感じています。

乾癬は、体調のバロメーターと考えるように

乾癬は治療で発疹を完全に消すことができる時代になりました。私が発症した頃から考えると、想像もしなかった進歩です。しかし、どんなに治療が進歩しても、日常生活での自己管理が大切だと痛感しています。そのため、私は、日常生活では太り過ぎないように、体重のコントロールには気を付け、また、適度な運動をすることで筋肉をつけるようにしています。ただ、日常診療では、あまり患者さんに「こうしなさいとか、ああしなさい」という指導はしていません。誰よりも、患者さんが病気をきちんと管理したいと思っているはずですから、その気持ちを尊重したいのです。

ひとつ、日常診療で患者さんにアドバイスしていることは、「乾癬の存在が、体調をあらわすバロメーターになるかもしれない」と考えてみてはどうかとお話ししています。つまり、乾癬が悪くなったら「どうしよう…」ではなく、乾癬が悪くなったということは、あなたの体が「今は体調が良くないから無理しないでね」と教えてくれているのだと考えて欲しいということです。そうやって、乾癬をバロメーターに体の状態に気を使うことができ、乾癬がない人なら無理をして気づいた時には大病をしていたかもしれないところを、乾癬があることによって、細かに体の状態を意識しながら生活できたため、長生き出来たと思ってもらえれば、それが一番良い治療を提供できたことになるのだと今は思っています。乾癬を治療されている多くの先生が、きっと同じ想いを持っておられるのではないでしょうか。

いいそらヒフ科クリニック 院長
佐藤 俊宏 先生

診療モットーは「水先案内人、タクシードライバーのような診療」。 これまで、大分大学医学部付属病院講師、大分県立病院皮膚科部長を務めるなど、長年にわたり大分県の皮膚科医療に貢献。

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