治療法について

治療法

外用療法(塗り薬) | 光線療法(紫外線の照射) | 内服療法(飲み薬) | 生物学的製剤による治療(注射)

さまざまな治療法を、患者さんの症状やライフスタイルに合わせて選択します。
乾癬の治療法は、「外用療法」、「光線療法」、「内服療法」、「生物学的製剤による治療」の大きく4つに分けられます。

それぞれの治療法に長所と短所があり、この中から、症状の重さ(重症度)やライフスタイルに合った治療法を担当の医師と選びます。また、いくつかの治療法を組み合わせて治療することもあります。ある患者さんによく効く方法が、他の患者さんにはあまり効果がない場合もありますので、医師とよく相談して治療を進めてください。

重症度別の治療法の目安
症状が重い場合(重症)→ 症状が軽い場合(軽症); 生物学的製剤による治療—注射; 内服療法[免疫抑制剤][ビタミンA誘導体] —飲み薬; 光線療法—紫外線の照射;外用療法[活性型ビタミンD3、ステロイド] —塗り薬; ※保険適用なし;飯塚 一:日臨皮会誌 23(5);438-442, 2006 より一部改

外用療法 光線療法 内服療法 生物学的製剤による治療

外用療法について 

塗り薬による治療

乾癬治療の基本は外用療法です。外用療法では、副腎皮質ステロイド(以下、ステロイド)外用薬と活性型ビタミンD3外用薬という種類の塗り薬が使用されます。

皮膚の表皮から水分が失われると、皮膚のバリア機能が低下します。乾癬の症状がある部分では、正常な皮膚よりも失われる水分量が多いことから、こまめに保湿剤を塗って皮膚の乾燥を防止し、バリア機能を維持するようにしましょう。

ステロイド外用薬
…炎症を抑える薬剤

ステロイド外用薬は、乾癬の症状のもととなる炎症を抑えることで症状を改善する薬剤です。薬の強さによってランクが5段階に分けられており、乾癬のタイプ、症状の部位、年齢などを考慮して、患者さんに適した薬剤を選択します。
ステロイド外用薬の使用中は、皮膚が薄くなり傷つきやすくなる、血管が浮き上がる、感染症にかかりやすくなるなどの副作用が起こることがあります。一般に、効果が強い薬剤ほど副作用もでやすい傾向があります。このため、漫然とは使用せず、症状が良くなったらステロイド外用薬のランクを下げる、塗る回数を減らすなどの工夫をします。 一方、ステロイド外用薬の使用を急にやめると、乾癬の症状が悪化する恐れがあります。自分の判断でやめたりせず、医師の指示に従ってください。

活性型ビタミンD3外用薬
…表皮細胞の異常な増殖を抑える薬剤

活性型ビタミンD3外用薬は、表皮細胞の異常な増殖を抑えることで、皮膚の肥厚や鱗屑(りんせつ)などの症状を改善する薬剤です。また、正常な細胞を増やして、皮膚を良い状態に保ちます。ステロイド外用薬とは異なり、使用をやめてから乾癬の症状が再発するまでの期間が長いという特徴があります。
活性型ビタミンD3外用薬を長期間使用すると、皮膚にひりひり感などの刺激がでたり、血液中のカルシウム量が増加するなどの全身の副作用が起こることがあります。

ステロイド外用薬と活性型ビタミンD3外用薬を
併用することもあります

ステロイド外用薬と活性型ビタミンD3外用薬を組み合わせて使用(併用)する治療法もあります。2種類の薬剤を併用することで、互いの長所と短所を補えるというメリットがあります。
具体的な併用方法として、ステロイド外用薬と活性型ビタミンD3外用薬を朝夕や週末と平日に分けて使用する方法、また重ね塗りしたりして使用する方法などがあります。ほかにも、初めに強力なステロイド外用薬と活性型ビタミンD3外用薬を併用して短期間で症状を軽減させ、しだいにステロイド外用薬を塗る回数を減らし、最終的には活性型ビタミンD3外用薬だけで良い状態を維持する方法(シークエンシャル療法)が広く行われています。
2014年には、ステロイドと活性型ビタミンD3を配合した外用薬も登場しました。

光線療法について 

紫外線の照射による治療

光線療法は、紫外線を照射して表皮細胞の異常な増殖や炎症を抑えることで症状を改善する治療法です。

光線療法には長い波長の紫外線(UVA:波長320~400nm)、中くらいの波長の紫外線(UVB:波長290~320nm)が用いられ、UVAを照射する「PUVA療法」、UVBを照射する「ナローバンドUVB(NB-UVB)療法」、皮膚症状のある部位だけにNB-UVBを照射する「ターゲット型NB-UVB療法」という3種類の治療法があります。
これまで、光線療法は皮膚症状が広範囲に及ぶ尋常性乾癬の患者さんに適した治療法とされてきましたが、ターゲット型NB-UVB療法の登場により局所療法として光線療法を行うことが可能になりました。

PUVA療法

紫外線への反応を高める薬剤を内服または外用した2時間後に、UVAを全身に照射します。通常、週3回の照射から開始し、症状の経過をみながら照射回数を減らしていきます。 また、バス(Bath)-PUVA療法は、全身に症状がある患者さんに対して行われ、ソラレンを溶かしたお風呂に15~30分間入浴してから、UVAを数分間照射する治療法です。

NB-UVB療法

波長311~312nmという狭い波長域のUVBを照射します。日焼けを起こしやすい短い波長の紫外線の混入が少なく、短期間の治療で症状を改善することができます。 外用療法で効果が乏しかった場合でも治療効果を期待できます。治療後は皮膚の良い状態が維持される期間が長く、数ヵ月~半年に及ぶこともあります。NB-UVB療法では、PUVA療法と異なり、治療前に薬剤を内服または外用する必要がなく簡便なので、今はほとんどの施設でNB-UVB療法を行っています。

ターゲット型NB-UVB療法

ターゲット型NB-UVB療法は、波長308nmのUVB(エキシマライト)や波長312nmのUVBを発生させる機器を使用し、主に症状のある部位だけを安全かつ効果的に、名刺サイズ程度の範囲で照射するターゲット型光線療法です。
1回の治療の所要時間が数秒~数分と短く、従来の光線療法に比べて少ない治療回数で症状の軽減が期待できます。従来の光線治療を行っても症状が部分的に残っている場合や、生え際などの治りにくい部位に再発した場合の治療にも有効です。

内服療法について 

飲み薬による治療

内服療法は、外用療法を行っても症状が良くならない場合や関節炎を合併している場合、また乾癬によって生活の質(Quality of Life:QOL)が損なわれている場合に考慮される治療法です。

免疫抑制剤やビタミンA誘導体といわれるタイプの飲み薬が使用されます。

免疫抑制剤

免疫抑制剤は、炎症を起こす物質を産生する免疫細胞に働きかけ、免疫反応を抑制することで症状を改善する薬剤です。尋常性乾癬で、皮膚症状が全身体表面積の30%以上の場合、PASIスコア*が12以上の場合、外用療法や光線療法を行っても症状が良くならない場合、QOLが低下している場合などに免疫抑制剤が使用されます。膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、関節症性乾癬の患者さんにも使用されます。
免疫抑制剤は、患者さんの症状に合わせて飲む量や飲み方を決めます。治療中は定期的に検査を行い、副作用が起こらないように飲む量を調節します。主な副作用は、腎機能障害や高血圧です。

ビタミンA誘導体

ビタミンA誘導体は、表皮細胞の異常な増殖を抑え、皮膚の新陳代謝を調整することで正常な皮膚を再形成する働きをもつ薬剤です。外用療法では症状が良くならない中等症から重症の尋常性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、関節症性乾癬の患者さんに使用されます。
治療中に脂質異常症、肝機能障害、口唇炎、脱毛などの副作用が起こることがあります。また、催奇形性があるため、妊婦や妊娠可能な女性には使用できません。

なお、すべての免疫抑制剤やビタミンA誘導体が、乾癬の治療に使用できるわけではありません。

*PASIスコア:乾癬の症状の重症度をあらわすスコア

生物学的製剤による治療について 

生物学的製剤による治療

尋常性乾癬では、他の全身療法を行っても症状が良くならない場合や関節症状がある場合に生物学的製剤が使用されます。一方、関節症性乾癬では、日常生活に支障がでる前に関節破壊の進行を抑制するため、早くから生物学的製剤の使用を考慮します。

生物学的製剤はバイオテクノロジーによってうまれた薬剤で、免疫に関与するサイトカインに直接働きかけ、過剰な免疫反応を抑制することで症状を改善する薬剤です。現在、国内では4種類の生物学的製剤が使用されています。これらは点滴または皮下注射で投与されます。

乾癬に関わるサイトカイン

サイトカインは、細胞から細胞へ情報を伝達し、体内に侵入した異物や危険物から体を守る「免疫システム」の働きをもちます。しかし、過剰に増えると炎症などを引き起こし、身体にいろいろな症状をもたらします。
乾癬の皮膚・関節症状のもととなる炎症反応には、主にTNF-α、IL-12、IL-23、IL-17Aというサイトカインが関与しています。TNF-αは樹状細胞を活性化して、IL-12、IL-23などのサイトカインを増加させます。そして、IL-23はTh17細胞を活性化して、IL-17Aなどのサイトカインを増加させ、皮膚や関節での炎症反応を引き起こします。
乾癬の治療に使用される生物学的製剤は、それぞれTNF-α、IL-12/IL-23、IL-17Aの働きを阻害することで炎症反応を抑え、症状を改善します。

生物学的製剤の注意点

生物学的製剤は、乾癬に対してすぐれた治療効果が期待できます。その一方で、重い感染症をはじめとする副作用が起こることがあり、副作用の予防と対策が必要です。このため、生物学的製剤による治療を行っている医療機関は限られています。また、事前の検査や過去の病歴、年齢などにより副作用を起こしやすいと判断された患者さんは、生物学的製剤を使用できない場合があります。

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