女性の視点から考える、乾癬治療

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意外に多い 思春期以前の 女性の乾癬発症

乾癬の患者数の男女比は2:1で、男性が女性の約2倍多く、乾癬が発症した年齢の平均値は48・9歳と報告されており、一般的に乾癬は中高年の男性に多い病気と考えられています。しかし、乾癬の発症年齢を年代別に細かくあらわしたグラフを見ると確かに男性は50代が発症のピークになっているのですが、女性は20代と50代のふたつの年代に発症のピークがあります(図1)。若い女性患者さんの場合、就職、結婚、出産などその後、様々なライフイベントがあり、乾癬の症状がどの程度コントロールできているかによって大きな影響を受ける可能性もあるため、よりきめ細やかな対応が必要になってきます。

生活の質(QOL)への 影響が大きい 女性の乾癬

乾癬患者さんのQOLについて年代別に評価した報告では、やはり若い人の方がQOLは損なわれる傾向にあり、男性より女性の方が大きくQOLが損なわれているという結果になっています。さらに、男性の場合は、40代、50代、60代と年齢が上がっていくとQOLへの影響が減っていくのに対して、女性は歳をとってもQOLは損なわれたままというのがグラフをみていただけると分かると思います。 女性にとって“見た目”は極めて重要であり、“見た目”が人間としての本来の能力や素質に関係なく評価にまで繋がってしまうことを感じているのだと思います。そのため、年齢に関係なくいつまでも綺麗でいたいという気持ちが強い女性患者さんの場合、乾癬の治療は単に症状の改善だけでなく、患者さんのQOL向上を目指すことが特に重要になってくるのです。

治療目標は、 女心のように 「千変万化」でよい

乾癬の症状を治療によってどんな風にコントロールしたいかは、常に同じである必要はありません。夏に、「サンダルを履きたい、短いスカートやノースリーブなど肌の露出の多い服を着たい」、「面接の時は綺麗な肌で臨みたい」、このように季節や進学、就職など、人生のターニングポイントで治療に求めることが変わってくるのは当然のことです。 多くの女性は、それぞれの患者さんの心の中にある「綺麗になりたい」という想いは単なる自分の悩みであって医師に相談することではないと考えてしまうようですが、それは、乾癬の治療の中で、とても大切な“治療の目標”なのです。そして、担当の先生と治療目標をきちんと話し合うことができれば、治療への意欲が生まれて、お薬をきちんとのむ、病院へ決められた日に受診するという治療の継続性が保たれていきます(図3)。そのため、今、感じている想いをきちんと医師に伝えることが、乾癬治療の大切な一歩になるのです。

 

東京医科大学 皮膚科学分野 教授
大久保ゆかり先生
乾癬治療を専門にしており、豊富な治療経験を持つ。薬を使って上手に痒みや皮膚の症状をコントロールすることに加えて、日常生活でのスキンケアの方法などきめ細やかな患者指導に定評がある。

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