治療疲れをしない、リズムの作り方

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全身に出る症状に苦しんだ思春期

自分が乾癬という病気であることを知ったのは小学生の頃で、膿疱性乾癬の症状が出たのは10歳の時でした。この症状のために、小学校ではずいぶんと嫌な思いをしました。私の場合は、足の裏と手のひらを除いて全身に症状が出たため、小学校でもすぐに私が病気であると皆に知られてしまいました。子どもは純粋なだけに残酷で、落屑を見れば「汚い」とストレートに言われ、落屑を集めて投げつけられたこともありました。私にとっては体の痛みやかゆみよりも、自分の皮膚が他の子と違うことが何よりも辛かったです。友達にからかわれ、「もう生きているのが嫌だ、学校へ行きたくない」と、母に泣きながら訴えたことも何度もありました。そんな時も、母は愛情を込めて、私の皮膚を優しく包み込むように毎日薬を塗ってくれました。皮膚を通じて伝わる母のぬくもりが、「一人じゃない、大丈夫」と、いつも私の心に勇気をくれたのを覚えています。

妊娠という喜びと乾癬の悪化という不安

乾癬が初めて重症化したのは24 歳の時で妊娠がきっかけでした。私の場合は、膿疱性乾癬であったために症状が悪化し、特に妊娠7ヵ月以降、症状はひどくなりました。出産するとしばらくは落ち着いていたのですが、ほっとしたのもつかの間、半年ほどでまた 悪くなりました。医師からは、出産に よる体への負担が大きくなったことや、慣れない育児での精神的なストレス、引っ越しなど気苦労の積み重ねが原因だろうと言われました。 第二子を妊娠した時も同じように悪化し、子どもを授かってうれしいという喜びと、日ごとに悪化していく肌の状態の間で気持ちが揺れ動きました。また、2年前に他の病気になったことをきっかけにして再び乾癬が悪化してしまい、ステロイドだけではなかなか 改善しなかったため、久しぶりに光線 療法を行いました。ところが、以前は効果のあった光線療法は、私の体質が変わったせいなのでしょうか、光を受けた部位に膿疱ができたため、生物学的製剤による治療に変更して、ようやく寛解状態になりました※。 こんな風に、小さい頃から何度も良い状態と悪い状態を繰り返してきた乾癬。良い状態になるといつも、「この状態が維持できそうだ」と期待してしまう自分がいるのですが、その後に悪化して、「あれは単なる一時的なものだったのだ」と気分が落ち込む、こんな波に揺さぶられながら、何とか病気と付き合ってきたように思います。

※生物学的製剤の効果には個人差があります。

症状が悪化した時は思考転換する

私の場合、3ヵ月ほど強い症状が集 中的に出るという傾向があります。鏡を見るたびに気落ちして、治療に疲れきってしまうこともありました。だから、治療疲れしないためにも、症状が悪化した時は、マイナス思考になるのではなく、できるだけ良い方向に思考転換するように心がけています。例えば、皮膚の皮がめくれあがるのも、「今の肌が脱皮して新しい肌に生まれ変 われる」と考えるようにしています。 そうすることで、いつも私を支えてきてくれた母の愛情をきちんと感じられたり、これから生まれてくる子ども を楽しみに想う余裕が持てたりするようになりました。特に、出産を控え乾癬の症状が強い時でも、時々動いたりおなかを蹴ったりする赤ちゃんを感じると、それだけで力をもらえました。生まれてからも抱っこしてほしい と手を伸ばしてくれると、こんなに小さな体で一生懸命に生きている姿に、 自分も負けてはいけないと強い気持ち を持てました。 乾癬は一人では闘えない病気です。「自分一人だけが・・・」と考えずに、常に周りの人との関係を大切にすることで、 自分自身の治療に対するモチベーションも維持できるように思います。  

自分の希望をしっかりと医師に伝える

医師が「膿疱はまだ小さいから気にしなくていいですよ」と言ってくれると、気持ち的に安心できる一方で、心の中では、「今は小さな膿疱でもどこまで広がるのか、いつまでこういう状態が続くのかわからない」という不安を抱くこともあります。 私も始めのうちは、治療について受け 身だったこともあり、ただ「よろしくお願いします」と言っていましたが、それではストレスがたまる一方で、結局は治療に疲れてしまうことがわかりました。それならば、できるだけ本当の気持ちを医師に話すようにしたほうが良いのではないか、そう思うようになったのです。もっと良くしたい部位や症状について率直に話し、肌が乾燥しているのが辛ければそのことを、また痛みがひどくて眠れないのなら痛み止め を希望するなど、今、自分が困っていることについて具体的に伝えるようにしました。すると、医師からも治療について以前よりも多くの提案をもらえる ようになりました。それ以来、私はできるだけ自分の希望はしっかりと医師に伝えるようにしています。また、短い診療時間の中で医師にきちんと今の状態を伝えることの大切さを実感し、入院中には自分の症状を記録するノートを作り、皮疹が体のどこにありどんな症状なのか、また、その症状に対する薬の効果はどうかを、印象のみでなく具体的に毎日の記録として残すようにもなりました。  

入院中に自身の症状を記録したノート

「乾癬」の存在を変えてみる

乾癬との付き合いも長くなり、今では、乾癬は自分の体の中にいる「悪友」と思うようにしています。症状を悪化させて、私の皮膚を醜い状態にする厄介者だけど、体調が悪い時は症状で教えてくれたし、家族の深い愛情も教えてくれました。だから、今まで一緒に過ごしてこられたのだと思います。そして、診察日も「病院へ行く面倒な日」と考えないようにするために、例 えば、診察の日は「おいしいご飯を食べる日」、「きれいな景色を見る日」など、診察日を自分の好きなことができる 日と考えるようにしています。こうすることで、ずいぶんと心の持ち様も変わります。また、乾癬の症状が強くても、おしゃれは積極的に楽しみたいと考えています。長袖のブラウスを羽織ったり、つばの長い帽子を合わせたり、症状を上手く隠しながらおしゃれする方法を自 分でいろいろ工夫しています。 美容院は人に肌を見せたくないという思いから最初は行くことをためらいましたが、勇気を出して行ってみたら、心がパッと明るくなりました。美容師さんはたくさんの人の肌を見ているし、中には乾癬のことを知っている方もいますから、シャンプーの方法など、いろいろな役立つ情報を教えてくれます。たしかに乾癬は目に付きやすい病気なので、自分の中に閉じこもりがちになるのもわかります。でも、見方を変えて表に出れば、気が付かなかった楽しい生活も見つかると思います。これからは自分の経験を踏まえ、ブログなどを通して悩み多き乾癬の女性たちが少しでも元気を出せるようにお手伝いできればと思っています。

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