出会いから4年、先生は何でも話せる存在に

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症状が改善せず、紹介で橋本先生を受診

安達さん:私が橋本先生と出会ったのは4年前。皮膚に銀白色の症状があり、爪もガタガタになっていました。他の皮膚科に通っていましたが、症状が良くならないので、その時の担当の先生が乾癬を専門に診ている病院を紹介してくれたのです。

橋本先生:安達さんの状態を見て、薬の量が少ないと判断し、増量しながら経過を見ることから始めました。今から4年前というとつい最近のようですが、乾癬の治療はここ数年で大きく変わりました。この4年で、症状をかなり抑えられる薬が使えるようになったのですが、その薬が非常に高価ということもあって切替えを躊躇していました。そのため、今の薬に切替えるまでに3年かかってしまったことについては、もう少し早いタイミングで決断しても良かったかなと反省しています。

安達さん:でも、私にとっては先生がいつも私の意見を尊重してくれて、躊躇する私を急かすこともなく、待ってくれ、自分が納得したタイミングで始められるようにしてくれたのは良かったと思っています。

橋本先生:基本的にはやはり治療は患者さんを中心に考えていきたいと思っているのですが、血液検査の結果が少し悪化していて、爪の状態も改善しなかったので、ここは切替えるべきタイミングだと思って、お話させていただきました。

誰にも言えないことだから、先生に

橋本先生:乾癬はなかなか治りにくい病気ですし、私は医師としてなんとか治してあげたいと思っていますので、患者さんが何を思っているのかを早い段階でキャッチすることを大切にしています。その点、安達さんのように積極的に話してくださる方は、病気に対する想いを理解しやすいので助かります。

安達さん:実は、乾癬が発症した当初、男性器の先端に血豆のようなものができて、泌尿器科を受診して塗り薬で治療していたのですが、他に症状も見られなかったので乾癬だとはわかりませんでした。そして、薬を塗っているうちに性器先端の血豆は消えたのですが、輪郭状に変わってきたので性病じゃないかと思い、SEXに対して暗い気持ちになったことがありました。30代の後半で、普通なら結婚を考える時期だと思うのですが、感染らないとはわかっていてもまるでそんな気持ちになれず、男性としての自信も無くしてしまったような感じでした。女性と親しくなっても、無意識のうちに一定の壁をつくっていたように思います。このことは、誰にも話せませんでした。

橋本先生:性的な問題は、男性患者さんだから医師に話すことに抵抗が少ないだろうということはないですよね。たとえ男性でも、やはり安達さんのように話しにくいというのが患者さんの本音だと思います。

安達さん:乾癬患者さんの中には、私が経験したのと同じように性的な問題に悩んでいる方もいらっしゃると思います。書籍やパンフレットでもあまりこの部分の問題について書かれている情報がないですからね。

橋本先生:医師は乾癬の症状が陰部に出ることを知識として知っていますが、やはり患者さんから訴えてこない限り見るわけにはいかないですね。本当は患者さんと色々な話をしながら、そうした誰にも相談できない問題だからこそ、医師となら話せるような雰囲気ができるといいのですが・・・。

まずは、短期的な治療目標を設定することから

橋本先生:いつも思うことは、乾癬は症状が落ち着いてくれば月に1回とか2ヵ月に1回くらいの通院ですむようになりますが、その短期間でも患者さんの生活や気候には変化があって、「変わりないですね」なんていうことはないのです。

安達さん:仕事上ヘルメットを被らないといけなくなった時に、何となく先生に「軟膏だといつもヘルメットの内側がべたついて困るんですよね」と話すと、先生が軟膏からローション剤に変えてくれましたね。どんな話の流れから先生に軟膏のべたつきに困っていることをお話したのか覚えていないのですが、橋本先生にはいつも自然に、悩みを聞き出してもらっているのだと思います。

橋本先生:悩みを聞けたからと言って、すぐに解決してあげられるわけではないところが辛いところでもありますね。症状が悪くなってきたので内服薬を増やしてもしっくりこなかったり、逆に副作用で血圧が上がってしまったり、日々、葛藤しています。

安達さん:橋本先生の診療でとてもいいと思うのは、悩みだけでなく、どうなりたいかという希望も一緒に聞いてくれるところです。

橋本先生:乾癬の治療は長く続いていく可能性がありますので、治療意欲を損なわないためにも、細かいスパンで目標を設定していくことが大切です。例えて言うならマラソンみたいなものですね。42・195キロを完走するという全体的な目標はあるものの、まずは目の前にある1キロをどう走るかということが大切で、この2つのコンビネーションが治療を前に進めていくのだと思います。「2年先に向かって頑張りましょう」と言われても、患者さんも辛いだけですよね。まずは、次の受診までのこの1、2ヵ月をどうしていくかを一緒に決めていくことが重要だと思っています。

安達さん:私の爪の症状が辛い時期には、治療費がかかるけど、一度、それを綺麗にする治療をやってみてはどうかと話してくれました。そして、爪がきちんと綺麗になった段階で、その先、治療を続けていくか考えればいいと言ってくれたので、始めやすかったです。

橋本先生:効果の高い治療を、リーズナブルかつ患者さんの負担が少なく提供できればそれが一番の理想ですが、残念ながら反比例してしまうこともあります。

安達さん:先生から言われた治療が自分で注射をする方法だとは思っていませんでしたので、びっくりしました。でも、治療によって爪の症状が改善された時は、本当に嬉しかったです。100パーセント治るとは思っていませんが、8割から9割くらい改善すると嬉しいですね。爪や皮膚が綺麗になっていくのと一緒に、気持ちの中にかかっていた霧も晴れていくような感じでした。

乾癬の情報を、もっとたくさんの人に知ってもらうために

橋本先生:乾癬はまだ一般の人に正しく理解されていない病気ということもあり、できるだけ病気であることを知られたくないというのが、患者さんの本音だと思うのですが、安達さんは、乾癬について、患者さんがどんなことで悩んでいるかを1人でも多くの人に知って欲しいという積極的なお考えをお持ちです。

安達さん:乾癬とつき合うようになって、自分の思い通りにいかないことが多いのは事実です。ただ、そういう生活だからこそ、「少しの良い事」を見つけるのが上手くなったような気がします。診療日の待ち時間が長くなることがありますが、「診察してすぐに仕事に戻るよりもストレスが溜まらなくて良い」とか、また、診療が最後になるのも、「後ろを気にせずにゆっくり話せるから良い」と思うようになりました。

橋本先生:そんな風に考えられるなんて、本当にすごいと思います。乾癬は外見から症状がわかる病気なので、患者さんの苦労は計り知れないものだと思います。それでも、前向きに今を生きている患者さんの姿に、いつも、自分自身が励まされ、勇気をもらっているというのが本当のところだと思います。

安達さん:今回、私はこのインタビューのお話をもらった時に、自分の抱えていた性の悩みについて思いきって話そうと思いました。話しにくくて、壁が高いからこそ、勇気を持って話し、同じ問題を抱えている人に何かを伝えたいと思ったのです。乾癬にはまだたくさんの問題があると思います。それが学会や患者会など、様々な場所で、誰かが自然に語れる世界ができていくことを、心から願っています。そして、このページがその一歩になれたらとても嬉しく思います。

 

橋本 由起 先生 × 安達さん

(左)橋本由起先生
東邦大学医療センター大森病院皮膚科 助教
皮膚科全般と乾癬外来を担当。軽症から難治性の乾癬患者まで幅広く診療する。患者一人ひとりの症状に応じた治療を行うよう心がけている。また院内の他科連携、院外の病診連携にも積極的に取り組んでいる。

(右)安達さん
先生の病院にて治療されている患者さん

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